5月12日
日本の主権はどこに

 8日に中国・瀋陽の日本総領事館で、中国の武装警察官が許可なしに侵入し、亡命を希望する北朝鮮の住民を拘束する事件が発生しました。

 在外公館はウィーン条約により許可のない現地国官吏の立ち入りを禁じており、中国も含め世界中のほとんどの163ヶ国が批准しています。中国外務省は「総領事館の安全を守るための配慮である」と会見し、ウィーン条約には違反してしない見解を示しました。

 マスコミ報道では中国側の強硬かつ強引な対応に批判を強めていますが、中国もさることながら、まずは日本側の「危機意識」のなさが批判されるべきでしょう。例え中国政府の意に反し、現場の警官が行き過ぎたとしても、わが国の主権が不当に侵害されたことは明らかで、抗議の意向しか示すことができない日本政府に強い憤りを覚えます。また、日本政府を頼った亡命者を受け容れられず、警官に連行されるのを座視したことで、国際社会からの日本の信頼はさらに地に堕ちました。亡命希望者の身柄が北朝鮮に受け渡された後、彼らの前途を思うと暗澹たる気持ちにならざるを得ません。民間の国際人権保護団体「アネムスティ」や世界中の人権団体、そして同じように主権を侵されずに亡命者をかくまったアメリカ、スペインなどは日本の独立国としての対応をどのようにみているのでしょうか。

 事件の一部始終を収めたビデオカメラによると、亡命申請を求める北朝鮮住民5人のうち、男性は人民警官の制止を振り切って、明らかに門を越え、日本領事館の敷地内に逃げ込んでいます。領事館前には人が群がり、クラクションの抗議、騒ぎを聞きつけた領事館員が「のそのそ」と見物人よろしく建物から出て行きます。そして、領事館員は治外法権を侵されたという認識があるのかないのか、「何だ、けんかならよそでやってくれ」と思ったかどうか分かりませんが、ポカーンと逮捕劇を見守っています。一向に体を挺して助けようともしません。「これが日本人の危機意識か」と落胆しました。今後は中国側が非を認め、日本側の身柄引渡し要求に応じるかが焦点になるでしょうが、事件が起こってからでは遅いのです。この国は、いつから独立国としての意識が全くなくなってしまったのでしょうか。外務省全体にもっと危機意識を持って、職責をまっとうしてもらいたいと強く願います。

 私は韓国を2回、中国を4回私的に訪問したことがあります。近現代史が好きで、政治に関心を持ったきっかけも近現代史からです。日本の大陸侵略や、朝鮮半島の植民地生活などの記録を残した博物館、記念館にも多く行きましたし、関連書籍も多く読んでいます。深い、そして不幸な歴史的経緯がわが国と、中国、朝鮮半島の間にあることもまた事実です。日本人もこうした歴史の経緯を踏まえ、中国や朝鮮半島を考えていますが、不幸な歴史経緯と、領事館が主権を侵害されたこととは全く別問題です。中国人が逆に同じことをされたら、どういう対応を示すか考え、日本は独立国として毅然とした対応を示してほしいものです。(続く)




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