5月14日
本当の国益とは何か

 鈴木宗男・元北海道開発庁長官の側近で、「外務省のラスプーチン」の異名を持つ佐藤優・前国際情報局主任分析官ら2人が本日、背任の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。

 私は自民党政治大学校の講義で、佐藤前分析官の講演を聴講したことがありますが、彼への印象は肯定的なものでした。「外務省のラスプーチン」などと喧伝されると、悪い主君の下でこそこそと不正や悪事に手を染めているダーティーなイメージがありますが、私にとっては彼は頭脳明晰で、幅広い人脈を持った外務省の特殊なエキスパートという印象でした。「時代、そして上に立つリーダーが彼を使いこなせなかったのか」と残念に思います。

 佐藤前分析官は、ロシア語、英語他いくつもの外国語をあやつり、ロシアの人脈は政府中枢部に直結しています。中東にも太いパイプを持ち、従来までの対米一辺倒の外交とは一味違う異色の、そしてうまく使えば日本の国益にかなう大きな財産を持っていました。例えば講演では、ロシアについて、地下経済や旧ソ連共産党員の跋扈、ロシア大統領選の内幕など通常知り得ない情報をさらりと披露したほか、ヨルダンとの親善外交の必要性なども説いていました。

 今回の容疑は、イスラエルで開かれた国際学会への参加者の派遣費用を、外務省として関連の国際機関「支援委員会」に不正にねん出させたという内容です。背任とは、他人の財産を侵害する権限を与えられた者が、本人の信頼に背いてその権限を濫用し、本人に財産上の損害を及ぼす行為です。つまり、支援対象国であるロシア側の要請がなかったにもかかわらず、渡航費や滞在費などの費用全額が、支援委から支払われたことが、国に損害を与えたということです。

 佐藤前分析官は、イスラエルに人脈を築きたかったのが動機のようですが、それ自体は外交官として職務上当然のことです。人脈を通じて、情報を取得し、政府にもアンダーグラウンドにも影響力を持たせ、外交や軍事面、経済面などで自国の有利に働かせようとする「国益」を考える意識が感じられます。現実に彼はやっていました。本来の背任行為からすれば、領事館の治外法権を犯された意識もなく、敷地内での北朝鮮亡命希望者の逮捕劇を高みの見物よろしく「のほほーん」と見守った中国・瀋陽の領事館員のほうが処罰されるべきでしょう。

 佐藤前分析官ら2人を逮捕は、間違いなく鈴木宗男の逮捕を視野に入れた「外堀」を埋めるか如く、宮野元秘書に続く第2弾です。鈴木元長官を首謀として、立件可能性が高い事件を丹念に捜査している様子がうかがえます。それゆえに、国益に必要悪ともいえた佐藤前分析官の逮捕は残念です。ロシアについて言えば、彼のような人脈や情報を持った外交官を要請するには、それはまた膨大なカネと時間がかかり、情報でブランクが生じることが予想されます。

 本当の国益とは何か。佐藤前分析官のような有能かつ個性の強い人材を使いこなせるリーダーが求められています。  




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