2月19日
虚偽の情報公開は許されない

 刑務所の受刑者の下半身に消防用の高圧放水ホースを浴びせ、死亡させてしまったとして名古屋刑務所の刑務官が、特別公務員暴行稜虐容疑で逮捕されたニュースは衝撃でした。刑務所は刑に服している受刑者を更正させ、社会復帰させるのが責務ですが、一方で、命や財産などを奪われた被害者の家族や、国民に対して罪を償わせている側面も持っています。今回の事件は、刑務官の行為が職務権限をはるかに逸脱している上、日本の人権後進国ぶりをさらけ出しました。もちろん、加害者だけでなく、被害者の人権も守られているとは言いがたいこの国ですが…。

 刑務所側は虐待により受刑者を死亡させた事実について、遺体を撮影したフィルムを焼却処分したり、刑務官同士で口裏を合わせるなどして隠蔽した疑いも浮上しています。森山法相の答弁からも、刑務所側が法務省には虚偽の報告をしていたのが分かります。刑務所は塀の中ですし、記者も一般人もほとんど足を踏み入れない場所です。弁護士や受刑者の家族との面会ですら、面会の決定権は刑務所側が持っており、なかなか情報公開が進みません。

 今回は社民党の福島瑞穂参院議員による質問で、虐待による受刑者死亡の実態が浮かび上がってきましたが、こうした人権を擁護する立場の国会議員が調査しなかったら、虐待死は闇に葬られていたことでしょう。有事法制などでは意見を異にしたとしても、こうした人権問題では政党間の垣根はありません。再発防止を図り、刑務所の情報公開の信憑性をこれから吟味しなくてはなりません。

 私は毎日新聞記者時代に函館少年刑務所の取材を数回しました。受刑者が作業によってできた家具や日用品などの即売展、そのほか、刑務所内の職業訓練の修了式の取材です。また、旭川刑務所の受刑者が革手錠で拘束されながら独房に入れられたとして刑務所を提訴した裁判も、仲のよい同僚が取材担当だったので、関心がありました。取材を通じての刑務所に対する所感は「刑務所ほど情報公開がされていない役所はない」ということです。刑務所側もまた、犯罪者の増加に施設の収容人数増設が追いつかなかったり、不況で受刑者の仕事が回らなかったり、あるいは刑務官が逆に受刑者から暴行を受けたりと大変な側面も持っています。自殺者が出たら、管理体制がなっていないと叩かれます。しかし、こうした受刑者に対する過度の暴行は許されるものではありませんし、法務省に報告があってしかるべきです。

 役所全般でいうなら、国防や外交、警察情報など国益を損なったり、国家機密に属したり、犯罪者を有利にさせるような情報公開は慎むべきものですが、それ以外の情報公開を進めることはやましい点がなければできるはずです。しかし、公開した情報が虚偽だったりした場合には、その信憑性が問われてきます。

 情報公開法も制定され、今後は役所のみならず、企業や団体でも情報を持っているサイドは個人情報の管理に対して大きな責任を負うことになります。行政側は住民から請求されたら正確な情報公開を行い、判断を任せるべきです。こうした情報公開へ向かう主体性が、国民の情報意識の高揚や地方分権、ひいては政治への関心につながるはずです。




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